偶成 2018 1 8
「偶成」 西郷隆盛
幾歴辛酸志始堅
丈夫玉砕恥甎全
我家遺法人知否
不為児孫買美田
幾たびか辛酸を歴て 志始めて堅し、
丈夫は玉砕するも 甎全を恥ず。
我が家の遺法 人知るや否や、
児孫の為に 美田を買わず。
何度も辛酸をなめて、始めて志が堅くなる。
男らしい男というのは、いさぎよく玉と砕けるもの、
なすこともなく生きながらえるのを恥とする。
わが家に伝わる教えを人は知っているだろうか。
それは他でもない、
子や孫のために、財産を残さないということだ。
「偶成」 ふと思いついてできた作品という意味。
「甎全」(せんぜん) なすこともなく生きながらえること。「瓦全」と同じ。
この詩は、大久保利通に送った書簡のなかに出てくるもので、
西郷隆盛の平生の覚悟であったという。
(引用元 「大人の国語力がつく漢詩100選」 守屋 洋 角川SSC新書)
西郷隆盛は、漢文の達人だったそうです。
私は、中学生の時に、この漢文に出会いました。
なぜか、「児孫の為に 美田を買わず」というところだけ覚えていました。
前半の部分は、中学生には、漢字が難しかったから、
学習しなかったのでしょうか。
ラフマス 2017 12 3
贅沢品を買う「すべての人々」は、
「すべての貧しい人々」の生活を支えているが、
守銭奴は、貧しい人々を貧苦のうちに死なせている。
(16世紀のフランスの経済学者 B・ラフマス)
たとえば、あなたが雑貨屋を営んでいたとします。
毎日、100円や200円の物ばかり売れて、うれしいでしょうか。
できれば、4980円の雑貨が売れてほしいと思うでしょう。
本音を言えば、店の奥にある9870円の雑貨が売れてほしいと願っているでしょう。
さて、4980円や9870円の雑貨を買う人たちは、どういう人たちか。
書名 消費低迷と日本経済
著者 小野 善康 朝日新聞出版
著者は、こう指摘します。
かつてのような経済の健全な循環を回復するには、
お金を使うことが必要になる。
しかし、物があふれる豊かな社会を築いた日本では、
お金を使うのに知恵や努力がいる。
そうした努力を避け、
何もしなければ、お金はたまる。
しかし、物が売れず、経済が停滞するから、
将来不安が広がり、ますます蓄財に走ると指摘します。
つまり、ラフマスが主張する、
「贅沢品を買う『すべての人々』は、
『すべての貧しい人々』の生活を支えているが、
守銭奴は、貧しい人々を貧苦のうちに死なせている」という状態に近いのが、
今の日本だと言えるかもしれません。
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